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【TALK】演劇部高校生と語るコロナ禍と未来




対談の前に


粂川:僕自身は高校時代、ずっと野球だけやっていて演劇部の高校生って、それこそ友達が数人いたくらいであんまり関わったことがないんだけど、部活を真剣にやっていたことに変わりはないので「演劇部」自体にはいまとても興味があるんです。いま僕の目標としては素敵な劇場をつくることが一番で、その過程ではやっぱり10代のパワーは見逃せないというか。ワークショップや演劇教育の勉強もしていきたい。そういう積み重ねが渦になって、最終的に演劇に触れる人の輪が広がって、その拠点となる劇場がつくれたらいいな、って。

演劇の話じゃなくても、何を思ってどう過ごしていて、何が不安で何が楽しくてって、そういうお話ができればいいなって思ってます。簡単に自己紹介からお願いしていいですか?


福島:福島です。今2年生で、高校に入ってから演劇始めたんですけど、結構ハマっちゃって、コロナ前とかは週1.2回は小劇場を中心に観劇に出かけていました。将来的にも劇団立てるとかもすごい興味あって、先ほど粂さんがおっしゃってたこと僕も似たようなこと思ってたので、楽しみです。

赤井:赤井です。同じく高校2年生で、演劇始めたのが中学2年生なので、今5年目になります。ドラマ鑑賞がすごく好きで、同じドラマを何度も見ちゃいます。

粂川:わかる、おんなじシーン何度もリピートするよね(笑)何が好きなんですか?

赤井:白い巨塔がすごく好きで。

粂川:おおお、意外なところ来たな。

赤井:演劇もずっと好きで、これからもできれば関わっていきたいんですけど、引退が今は寂しいです。

粂川:引退はいつなんですか?

赤井:いつもだったら3年の4,5月くらいなんですけど、今年はどうなるか…



ここ1年の演劇活動は、どのくらいやれていたんですか?


粂川:舞台活動は、ゼロです(笑)。ちょうど去年の今頃に明石家さんまさん主演の舞台に出させていただいたんですけど、たくさん勉強したと思って「よし、飛ぶぞ」ってところで大地がなくなりました。

赤井:私たちも去年の冬の公演からつぶれてしまって。文化祭もなくなったので中学生とかはほとんど何もできてないです。高校生は地区大会が開催できたので出られたんですけど、そこから緊急事態宣言で。

粂川:今の部活はどうしてるの?

福島:オンライン演劇祭に向けた作品作りをしています。もともと予定してた公演の稽古とかは止まってますね

粂川:オンライン演劇祭か。どんなのやるんですか?

福島:部としてのコンセプトは、「ZOOM演劇じゃない映像演劇を作ろう」ってことになり

粂川:うわぁ最先端。

福島:稽古自体もかなり人数減らして、劇自体も部長の赤井ひとりの作品なんですけど

粂川:いいね、攻めますね。部員は何人ですか。

赤井:中学と合わせると52名くらい

粂川:52名いるのにオンライン演劇祭はひとり芝居なの?!バランスよ!(笑)



「ZOOMじゃない映像演劇」はうまくいきそうですか?


粂川:すごく興味ありますね。僕らも同じように、どうしたら演劇の魅力を残したままインターネットの世界に持ち込めるかは勉強と実験をたくさんしていく予定なんですけど、それにしても難しい。「ライブ」っていう最大最強の武器を封じられたところからのスタートですからね。今回はどうやってつくってるんですか?

赤井:大きな壁の部屋を作って、そこにカメラ当てて

粂川:結構映像としてはドラマみたいな感じですかね?

福島:そうですね。

粂川:そこに難しさありません?ドラマになるのか演劇になるのか、果たして「演劇ってなんだ?」っていう哲学の領域に踏み込んでしまう。

赤井:あー、それは結構部内で話になりました。

粂川:いまのところの答えみたいのは出ました?

赤井:話の中で、管理人みたいなポジションの人を置いて、常にそのシーンを見てるっていうところを撮るようにしました。演劇でいうお客さんというか。映像の中で世界が完結するんじゃなくて、観ている人がいるっていう演劇らしさを表現しようかなという

粂川:「リアルタイムで観ている存在=観客」が含まれてることを演劇の定義にしたんですね。おもしろい!確かに無人の映画館で上演されても映画は映画ですけど、誰も観ていない演劇はちょっと未完成ですもんね。



やっぱりドラマと演劇は違いますか?


赤井:そうですね。やる前は何回も撮り直せるっていうのでガチガチにならずに済むかなと思ったんですけど、いざやってみると、カメラを向けられて演技するっていうのはすごく緊張してしまって

粂川:結構違いあるよね。演劇は一連の流れの中だけど、映像はカットかけられるとそこで終わりだから。しかも繰り返す。

福島:あとは、映画とかドラマって、基本的にカット割りとかで分けて撮るから、役者さん自身がその役じゃない時間をいっぱい過ごしながら進んでいくじゃないですか。でも演劇は、役者さんと観る人が完全に肉体的な意味で、1時間なら1時間っていうおんなじ時間を共有できるっていうのが、いいなって思いますね。役者も1時間分疲れてるし、お客さんも同じだけ疲れて、一緒にやってるっていうその感覚が演劇って感じがします。

粂川:そうなると余計にオンライン演劇に適用するの難しさありますね。

福島:今も、試行錯誤しながらどうやったらお客さんを飽きさせないかをみんなで考えながら撮ってます。

粂川:頼もしい…‼



コロナ禍で一番悲しかったことは?


福島:どっか出かけた時も、本当はもっと一緒にいたいけど、早く帰ったほうがいいよねみたいな雰囲気になるのが、ちょっと個人的に悲しいなって思います。

粂川:観劇後とかね、ご飯食べながら感想とか言い合いたいのに!みたいな

福島:ほんとに、どうしようもないんですけどね

赤井:私は、すごいお世話になった先輩がいて、引退式がなくなっちゃって先輩も受験モードにもう入っちゃって、最後の感謝もちゃんと伝えられないままスーっとお別れになっちゃって、それがすごい寂しくて。

粂川:受験か…(アルバイト/塾講師)

福島:一個上の代から、センター試験が共通試験になったんですよ

粂川:全科目結構変わりましたね。特に英語や国語は予備校が出してた予想問題ともかなりちがう形式になってて、来年以降もしばらく安定しないと思います。

福島:はい。しかも、会場も感染対策を打たなきゃいけないってなって、変化することがどんどん増える中で、僕らの代はどうなるんだろうとか、ほんとに先が読めないので。

赤井:先が読めないストレスは、結構一番かもしれないですね。修学旅行も一応場所も時期もかえて、やるってことにはなってるんですけど、無理じゃない?みたいな雰囲気あります

粂川:やりたい、という思いと、無理だよな、そんな場合じゃないよな、我慢してるの自分たちだけじゃないしな、みたいなのが、すごい複雑ですよね。今の時代、変に発言もしにくかったりするし。



SNSはやりますか?


福島:僕は結構やりますね、演劇の情報を集めるのも基本そこからです

粂川:役者として自分を売り込むためのツールだから、もちろん僕も結構やります。ただ使い方とか言葉とかは気を遣うようにしてるかな。しかしながら苦手です(笑)

赤井:私は、こないだ初めて友達に登録してもらいました

粂川:お、どうでした?

赤井:なんか、世界が広がりました(笑)ぜんぜん、自分では一個も発信しないんですけど、見る専門で。

粂川:そうよね、なんか投稿するの、ちょっと怖さあったりするもんね

赤井:すっごいわかります

粂川:お二人の世代って、物心ついた時からSNSが当たり前にそばにあったと思うんですけど、何か感じるところがあったりしますか?使い方がどんどん広がる一方で、今後ぼくらの世代はもっとうまく付き合っていかなきゃいけないと思うんですが。

福島:今は、SNSを人じゃなくてアカウントとしてみてる人も少なくないんじゃないかなとは感じてます。だから誹謗中傷とかもあるのかなって。文字や画像が流れてくるツールでも、その奥に人がいることを忘れたくないなって思います。

赤井:使い方を気を付ければすごく楽しいものだと思うので、あんまり悪いイメージだけにはなってほしくないかな



自粛期間でよかったなあと思ったことは?


福島:自粛期間で家族と過ごす時間が増えたのはよかったなと思います。高校生っていうこの時期に、そういう時間がとれることはあんまりないと思うので。

赤井:私は普段から結構出不精なので(笑)誰にもなにも言われずに引きこもれるのは、気が楽だなあと思ったりしました。人気ドラマの再放送一気見!みたいなのをずっとみてたりとか。

福島:音楽のアーティストさんとかも、結構オンラインライブとかやってくれたりして。僕が好きなサカナクションさんとかは、普通にライブの様子を撮るんじゃなくて、ライブとMVの狭間のことをやろうみたいな、生の臨場感だけじゃなくて、カメラワークを工夫してセットを綺麗にみせるカットがあったりとか。

赤井:私も、今まで音楽は好きなの1本!って感じだったけど、自粛期間にいろんな音楽を聴くようになりました。自粛がなかったら出会えなかったかなとも思いますね。

粂川:そういう意味で音楽は強し、楽しいですよね。

福島:逆に赤井にお勧めしてもらって、お互いに好きなものを共有し合ったりとか。

赤井:楽しかったです。

粂川:いいなあ、それ。それ演劇でも広まって欲しい。

福島:そうなんですよね、んー、若干突破口みたいなものは見えた気がしたんですけど。今まで、演劇はキャパシティが決まってて、頑張っても観てもらえるお客さんの数が決まってるよってのをずっと言われてたと思うんですけど、オンラインってある意味可能性とか間口が広がるのかもとか思ったり。

粂川:それは間違いない。キャパ(客席)100人の劇場の作品の公開範囲を100人から全世界に拡大できるってことですもんね。ただ、それが面白いのかとか、映画やドラマに並べるエンタメかどうかは全くの別問題ですけど。

福島:難しいですよね、うまく使いこなすのは。

粂川:客席とかもさ、今まで小劇場とかはギュッと圧迫感あったとおもうんですけど。客席間隔空けたらめちゃくちゃ快適になって。やる側だから、観にいって席の間隔空いてると「うわあこれ絶対お金(収益)きついんだろうな」って思うけど、観てる側からしたら、最高だぜずっとこれにしてくれって感じ。

福島:荷物とかおけますしね。



同級生からみた演劇って?


赤井:クラス替えとかで、初めて会ったことかに「何部なの?」って聞かれて演劇部っていうと「えーー、なんで?」って言われることがあって。

粂川:「なんで?」かぁ(笑)

赤井:バスケ部とかだったら「えー、バスケやってるんだ、すごいね」ってなるところだと思うんですけど、演劇部だとそうはならないんだなって。

粂川:確かにね、そうね、ならないかもね。

赤井:あとあるのが、演劇部っていうと「じゃあなんかやってみてよ」言われる。

粂川:パワハラだ。部活ハラスメント。

赤井:演劇って、全然かかわったことない人だと観るのもやるのも”高尚な趣味”みたいに思われることが多くて。

粂川:高尚かぁ。全然地べた這いずりまわってるんですけどね。

赤井:映画もライブも行くけど、演劇は「そんなそんな私には(敷居が高すぎます)」みたいになっちゃうのはちょっと悲しさあります(笑)。

粂川:そういう子が実際にみてくれることもあるんですか?

赤井:ありますあります。

粂川:どうでした?反応は(笑)

赤井:やると「すっごいよかったよ!きてよかった!」って言ってくれる子が多いです。そういう時は本当にうれしい。

粂川:ですよね。しかもそういう人ほど次の公演もホントに来てくれたりする。

福島:大会とかは、同じように演劇に慣れ親しんだ人が見てくれるんですけど、たまに初めて演劇みたみたいな人に喜んでもらえると、すっごい嬉しいです。

粂川:めちゃめちゃわかる!最終的には、ふらっと劇場でもいくか!が当たり前になれればいいよなって思います。そういう魅力をもった作品だったり劇場だったりをつくって、育てていきたいです。今日はありがとうございました!



(2021年1月24日オンライン収録)


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