top of page
検索
  • 執筆者の写真theatertaion

【INTERVIEW】家族と、友達と、恋人と。行くと決めたその日から、夢を描ける劇場づくりを


高校では野球に全力を注ぎ、ドイツへ1年滞在。その後日本へ帰国後、中学時代からお芝居をやりたいと考えていた粂川さんは早稲田大学に入学してから演劇を始めました。現在演劇に携わり始めて7年。役者、スタッフをこなすうちに少しずつ考え始めた「劇場という空間の在り方」について、お話を聞かせてもらいました。


劇場を中心に、ディズニーランドのようなものを作りたい


「ずっと前から、舞台や映画館といった広い意味での劇場という場所/空間が好きだった。そこに行かないと経験ができない、そこに居る人たちと空間を共有したりする、アナログなところが好き」そう話す粂川さんの目指す劇場は、ホテルのように泊まれる場所があったり、レストランも入っている、まるでディズニーランドのような劇場。





「劇場が中心にあったうえでそういうのがあったら面白いなと。実績を積んでおじさんになってから進めようと思っていたが、そんな夢はおじさんになる前に終わるかもしれないな、と」コロナの影響で世の中が大きく変化した今、やりたいことをやっていくということに大きな意味を見出したと教えてくださいました。


劇場に来ることが「いいな」と思ってもらうことが1番ではあるけれども、劇場に来なくても楽しめるコンテンツを発信していくこと。粂川さんはこの2つの両立を目指します。「劇場にいるから来いというスタンスは、もう時代に合わないし届かない」

「人間を消費しない場所が劇場だと思っている。舞台の宣伝は反応が悪いけれど、面白くないんでしょうね。劇場とか演劇とか使って、SNSのフィールドに持ち込んだ時に面白くしなければならない、その形の演劇も探さないといけない。お客さんがいないからこそ撮れる映像やできることをやりたい」






デートや友達を連れてこられるような、日常の娯楽の選択肢の1つにするのも目標だそうで、この劇場のファンだ、あの劇場でやるならきっと面白いはずだ、と感じてくれる劇場づくりを目指しているそうです。

また、劇場で公演する舞台にもバリエーションをもたせ、行く度に装飾が変わったり、「間隔をあけて、良い椅子で行儀よく観る回」と「シェイクスピアの時代のように、立ち見でぎゅうぎゅうで観る、話してもご飯を食べていてもよいフェスのような回」など多彩な面をつくり上げていきたいそう。


「行くと決めた瞬間から、予約した瞬間からワクワクして、観て終わりではなく見た後も楽しさが続くような劇場がいい」



その場に行くと感じるものが違うはず


劇場を作るにあたり、その企画の1つとして劇場企画「タイオン」を立ち上げ、2021年3月末に公演を打つとのこと。基本的には演者側だった粂川さんですが、今回公演する舞台『ナイルの西で』では、主宰と作・演出を務めます。







「主宰や作演は、責任も恥ずかしさも全部かぶることになる。でも、自分でやりたいことをやっていける力をつけないと、おじさんになったときにあの時やっておけばよかったと思うだろうから」




人と人が会うことの価値をテーマにした『ナイルの西で』。

役者さん同士の間にビニールシートを設置して公演。キャラクター同士の距離感、もどかしさを与える印象となっています。粂川さんが脚本を書くにあたって最初に決めたシーンは携帯を折るところ。アンチ機械文明とまでもいかなくとも、それ以外の世界にも価値はあるはずだと書きたかったと話します。また、この脚本にシンボルとして出てくるのはエジプトのピラミッド。


「あんなシンプルな形で、広大な砂漠に三角のものが立っているって、なんだかわからないけれど、きっとその場に行くと感じるものが違うはず。写真でみるのとその場に行くのではやっぱり大違い。そのシンボルとして台本に入れ込みたかった」とお話してくださいました。



コロナの影響で露呈した、世間と劇場との距離感


コロナの影響で、劇場や演劇、エンターテインメント業界への批判も多く目に留まった方もいるのではないでしょうか。


「お芝居の話がしたいのは、お芝居をしている人間だけということに気づいた」


その距離感が嫌になり、どうにかしたいという思いが強くなった粂川さん。

劇場をつくるその時にむけて、4月から広告の仕事を始めることを決めており、「社会の現場で得た知識やスキルを、演劇にうまく繋げて還元することができたら嬉しい」と笑顔。




「好きな劇団や企画で、1年間のスケジュールのプログラムを組みたい。それで劇場のファンがついたりして。そういうおじさんになっていたい。寄り道をしていいと思っているし、先に目的を投げて、そこにどう行くかは行きながら考えようと思っています。まずは自分が一番ワクワクしていたい」


「劇場」という場所が娯楽の1つの選択肢として増えてほしいという思いが強く伝わった今回の取材。まずはその1つ目の企画となる劇場企画「タイオン」の『ナイルの西で』を、私も楽しみにしています。





写真:劇場企画「タイオン」・染谷ノエル

書き手: 染谷ノエル



閲覧数:285回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page